「…それが?」
「『托卵』っつーらしいぞ。カッコウの雛は他の鳥より早く生まれるらしい。んで他の雛の卵を落としちまうらしい」
「…カッコウの事はもういいから!らしいらしいばっかじゃん!それより早くエントリーシート書き上げて!…」


中の自宅に訪れている拓人。未だ内定を貰えてない中は、自分の履歴書に問題があるのでは?と拓人を呼び出して再度チェックを入れていた。

特に問題が見当たらなかったので、次は今度受ける予定の企業のエントリーシートもチェックしてみよう、となった所で、中がさっきの事を呟いたのだ。


外は晴れ渡って、春の澄んだ空気が満ち満ちている。


…中の気持ちもわからなくないかも…な。

そう思った拓人も同じように窓の外を見た。小鳥の囀ずる声が聞こえる気がする…。


「…チュー」
「ん?」
「よそ見すんなよー」


中に目を戻すと、ESを真面目に書いている姿が映る。

(…それは…お前だろ…)

怒りを静めるのに少々時間を擁した。