「あの!これ、ひょっとして貴方のですか?」

ポケットから取り出したそれを彼に見せると
私の手にあったものはすぐに彼の手の中に収まった

「ありがとう!!」

「ひぇっ…ど、どういたしまして」

がしりと両手を掴まれ、感涙された

「よかった、これがなかったら相棒にまた怒られるところだったよ…ありがとな嬢ちゃん」

「いえ、ところでそれって何ですか?沢山ありましたけど」

「…お金だよ、見たことない訳無いよな、大丈夫かあ?」

「お金ですか?ご冗談を、こんなお金見たことありませんよ」

お金?いやいやいや、四角い穴のお金なんて現代にはないけど…というかさっきからこの人の服装も気になるんだけど

「ひょっとして、ドラマか何かの撮影ですか?」

「どらま?さつえい…」

顎に手を当て、しばらく考えていたお兄さんは何か思いついたようにハッとすると、またがしりと今度は右手だけを掴んだ

「お嬢さんの言うことは僕には理解し難いと見た、よし相棒のところまで行こう」

と、随分と大きな歩幅で歩き出した

「え!?あ、あの離してください!ちょ、どこ行くんですか!?」

目の前をズカズカと歩くお兄さんは、時代劇で見るようなじんべい