歌舞伎町の似合う(?)女



「お客さーん。到着しました。成田空港です。」



その声は、俺を現実へと引き戻した。



隣の平和な女に視線を流すと、ゴウゴウ高いびきをかいていた。



「おーい、夏川。起きろよ。」



その頰をペシペシ叩くも、ウフフグフフと気味の悪い声を漏らすだけだ。



食い物の夢でも見てんのか?



最後まで能天気な女。

そうぼやきつつも、俺は、最後なのだからと、彼女の広い額にそっと口付けた。



その瞬間、口角がニィーーッと横に引かれた。

その開かれた眸は、悪戯げに輝いていた。



「何、やってんのよ?冬山は、馬鹿ね〜、相変わらず。」



「狸寝入りかよ!?こんのクソ女が!!じゃあな、アメリカで元気にやれよ!」



俺は、あまりの小っ恥ずかしさから、ゲシゲシと彼女をタクシーから追い出す。



「ワオ、もうこんな時間だわ。じゃあね、冬山。」



彼女は、大袈裟なリアクションを挟み、俺に背を向けた。



そして———。

「待ってる。」

去り際、振り返ることなく、夏川は、一言零した。



微妙な雰囲気と共にタクシーに残された俺は、頰を染めて項垂れる。



「この女、マジ最悪。」

タクシーの運転手が、呆れ顔をこちらに向けていた。

「貴方も、相当な馬鹿なんですね。」



「馬鹿なんですよ。」



これでも一応、医者なんですけどね。



俺は、額を押さえながら答えた。