朝でも、夜でも、丑三つ時でも、バケモノ並みにテンヤワンヤな街———。

———歌舞伎町。

その隅っこに、重苦しい老舗オーラ全開のカクテルバー。

ショットバー〝King Of Martini 〟

シックな雰囲気のおし扉には、ブラックプレートが、掛けられている。

バックからあてられるライトが、プレートの文字を、ボンヤリと浮かびあがらせていた。

〝カクテルはマティーニに始まり、マティーニに終わるのだよ〟

格言じみた一節が、マスターの気高いバーテンプライドを感じさせる。

マティーニ。

それは、シンプルかつ完璧ともいえる、至上のカクテル———。

それ故、バーテンダーを試すカクテルであるともいわれるのだ。