ピンポーン

インターホンを鳴らす。

返事がない。

・・・・・・留守かな?

ガチャ――――――

ドアが開くと同時に手が飛び出してきた。

一切日に焼けていない真っ白な手。

「わっ!ビックリし」

その手は私の腕を捕まえた。

ひやりとした感覚とともに部屋の中に引きずり込まれる。
「キャ・・・・・・!?」

ダンッ

私は手で口を塞がれ、背中を壁に押し付けられた。

もがいても、この体勢はかわらない。

そっと目を開いた私は視線を巡らせた。

目をやった先にいたのは男の人だった。

歳は・・・同じくらい?

キメの細かい白い肌に、整った顔つき。

銀色の髪。

でも、それよりも気になるのは・・・・・・

赫。

そう、鈍く光る瞳が私を捉えて離さない。

カラーコンタクトではなさそう。

でも・・・だったらなんだというの?

何よこれ、どうなってるの?

この人は誰?

も・・・やだ・・・・・・怖い。

怖い、やめて、怖い、誰か・・・・・・

目に、涙が溜まる。

何をするの?

そう思っていると、その人は口を開ける。

光る・・・・・・・・・牙・・・?

あぁ、なんだ、夢か。

いや、夢なら・・・夢なら抑えられた腕が、口元が、どうして痛いの・・・・・・!

なんで!なんでよ!?

もうやだぁ。

でも、抑えられていて、声すら出せない。

私は小刻みに震える体でただただ涙を流した。

男の口が私の首筋に近づく。

そっと牙が触れる。

そして・・・・・・

・・・っ・・・・・・!

呼吸が乱れる。

痛い、痛い、痛い・・・・・・

血が・・・吸われてるのがわかる。

そうして、私に少しの冷静さが戻った頃。

いつの間にか空は暗くなっていた。

暗闇の中、首元から微かに感じる赫と月の光があたりを照らす。


静寂に包まれて、血をすする音と時を刻む時計の音だけが響いていた。