私は昔から人の上に立っていた。

小学校、中学校では勉強、運動などすべてにおいて私の右に出るものはいなかった。

そして、私はいつも誰かと一緒に笑っていた。

いや、本当の意味で笑えていたのは小学生の時だけか。

中学校にあがるとき、両親が離婚した。

私は母親と住むことを選び、父親は私に『いっぱい会いに行くからな!』と言った。

それっきり、未だに父親は私に会いに来ない。

最初の頃は母にいつ来るの?と訪ねていたが、その度に母は機嫌を損ねるのでいつの間にか言わなくなった。

中学校では初めて話す人が沢山いた。

私の友達も、新しく友達になった人とよく話していた。

私はそれが怖くて仕方なかった。

父のように、私から離れていってしまいそうで…………

だから私は友達を支配した。

クラスをまとめあげ、私に従わせた。
私は、絶対的地位を手に入れたのだ。

そうする事で私の友達は私から離れない。

すべては友達を失わないためだった。

相変わらずテストではいい点をとり、スポーツ面でも活躍し、クラスのトップにふさわしい存在であり続けた。

ときには誰かを蹴落とし、クラスメイトに畏怖を与えた。

その度に、私の心からの笑顔はかすれていった。

けれどもそれはいつの日か当たり前になり、人の上に立つことで優越感を覚えるようになった。

その優越感だけが、私に残る唯一の存在意義になったのだった。

やがて勉強やスポーツをすることがなくなり、私の学力と運動能力は人並みになった。
ここまで地位を確立した私にはもう肩書きは必要ない、そう思ったからだ。

しかし、状況は変わる。

私は友達と同じ高校に入った。

登校初日、由紀と一緒に近くの席の子に声をかけた。
そろそろこのグループにも人を増やしてもいいと思ったからだ。

次の日、萌々と名乗る彼女をグループに紹介した。
何度か、グループに打ち解けやすいように手助けもした。

彼女の存在が私の絶対的地位を大きく揺さぶるなどと思いもせずに。


もし、もう一度そのときをやり直せるのなら、私は絶対にその子に声をかけたりしない。


彼女の存在が私の歯車を狂わせた。