「じゃ、帰るわ。」

「…………うん。」

私達は玄関にいた。
私は、ドアを開けようとドアノブに手を置いた。

    パシッ

すると彼は、そんな私の手を制止した。

…………え?

びっくりして私は振り返った。
レイさんと目が合う。

そして…………

レイさんと私の唇がかすかに触れ合った。

…………

え…………
え、え、えぇ!?

状況が把握出来ていない。

いいいいま、何があった!?
私、今、レイさんと…………

顔が熱い。
きっと赤くなっているに違いない。
驚きすぎて、息をするのを忘れそうだ。

ねぇ、レイさん。
なんでそんなことしたの?

そんなことを考えながら、私はいつの間にかレイさんを見つめていた。

 「…………印だよ。」

シルシ?

 「これでもう、他のヴァンパイアは寄ってこない。」

それを聞いた途端、私の心は冷静さを取り戻した。

あ……なんだ…………
特別意味があるわけではないんだ…………

「…………うん。じゃあね、ありがと。」

そんな私を横目で見たあと、彼はこの部屋から出ていった。