いつもと変わらないはずのある日のことだった。

彼女が来る時間よりも少し前――黄昏時に俺の目の前に奴はいた。

ここ最近俺達の世界で“純血殺し”と名が上がっていた男だ。

実力は確かで貴族階級の者にはこいつを見たら逃げろと忠告しているほどの要注意人物。

しかし、奴の手で葬られた仲間は必ずしも悪いやつじゃない。

正体を隠し、血を一切吸わず誰よりも人を好み寄り添おうとしていた者も実際に殺されている。

そう、こいつは司令に従わず私欲の為にヴァンパイアを狩っているのだ。

俺達にとってはもちろん“脅威”であり、クロユリにとってもそれは変わらない。

しかしそいつはクロユリに付いている。

組織としてもその戦力を失うのは惜しいのだろう。

何度も、何度も、裏で隠蔽工作が行われてきた。

そこでヴァンパイア側からの信頼を失うという事は考えなかったのか。

・・・・・・いや、彼らはもうとっくに知っているのだろう。

俺達が彼らに一切の信頼を置いていないということを。

そんなことを考えてる間も男は1歩、また1歩とこちらに近づいてくる。

その目に鈍い光を宿らせて。

・・・あぁ、今度の標的は俺か。

そうは思っても特にそれといった感情はなかった。

どちらかというと少しほっとしたくらいだ。


やっと終われる、そう考えた。