私は、萌々が帰ってより一層静かに感じられる部屋で、萌々が生まれたあとの父との会話を思い出していた。


「萌々が5歳になったらハンターの養成所に入れろ。」

「・・・・・・嫌です。」

あの子に私と同じ道はたどらせない。

「萌々は普通の人間と同様に育てます。人としての幸せを見つけて欲しいのです。」

「・・・・・・俺は、月の奴らにあとを継がせる気は無い。」

「存じております。」

「だがお前はクロユリを脱退した。萌々につがせるのが妥当だと思わないか。」

予想通りの反応だ。

「萌々には継がせません。」

それを見込んで、ここに来たのだ。

「じゃあ、どうする気だ。」

もう、覚悟は出来ている。

「私が、あとを継ぎます。」

一度は逃げ出したこの世界。

まだ何も知らない萌々よりも、昔この世界にいた私を戻したほうが手っ取り早く戦力を得られることは父もわかっているだろう。

ここに戻ることで萌々を守れるのなら

「私の残された時間すべてをクロユリに捧げます。」

                 ――――安いことだ。