落ち着きを取り戻すと、私はレイを押しのけた。

ぬくもりが離れる瞬間、現実に突き戻された気がした。

でも、私はレイと一緒にいてはならない。

ぬくもりが消えて冷えた頭はとても冷静だ。

レイと離れるための準備を進める。

「レイ…………もう私に近寄らないで。」

レイが私の記憶を消そうとしなければ、もうとっくにそうなっていたのだ。

「私の血はハンターの血だった。」

それから私は母に聞いたことを全て話した。

 「…………そんなとこだろうと思った。だから記憶を消そうとした。」

「やっぱり、気づいてたんだね。」

 「まぁな。でも……俺が、俺のせいで苦しむ萌々を見たくなかったんだ。それが、記憶を消そうとした1番の理由。」

確かに、記憶を消されてたら苦しむことはなかったと思う。

けど、レイのことならとことん苦しみたかった。

「…………苦しみの中で、レイを感じられるなら、私はずっと苦しみ続けたい。」

私は目を伏せてそう言った。

 「じゃあ…………俺のことで苦しんでくれ。」

「…………え」

顔を上げると、レイは私の首筋に手を触れた。

あ…………噛み跡がない。

それじゃあレイは変装用のカラーコンタクトの奥で血に飢えていたのだろうか。

  レイは、私に2本の道を残した。

このままレイとの関係を絶つか、それとも…………突きつけられた現実の中で足掻くだけ足掻いてみるか。

答えはもう、とっくに出ている。


私はそっと目を閉じた。