午後6時。

熱はまだあるものの、体は楽になった。

レイは、もう家にいるかな。

今までならこの時間はレイと会ってる。

そこでなんの意味も持たないただの会話をするの。

私はそっと笑みをこぼした。

…………はずなのに、視界が滲んでいることに気がつく。

…………あれ…………?

なんで…………

こんなの、私らしくない。

私は必死で涙をこらえる。

けれど、脳裏に浮かぶのは温かい思い出ばかりで…………

その優しい時間をこれほど恨むことはないだろう。

私の頬を熱い熱い涙が何度も濡らした。

『会いたい』なんて思っちゃいけないのに…………

思う資格なんてないのに…………

…………忘れなくちゃいけない。


だから今私が泣いているのは、きっと熱のせい。