「いつもなら、もう記憶を消してる頃かな。」

そう話し始めた頃には、男の瞳から赫は消えていた。

そして、さっきとは別人みたいに見える。

こうやってみるとただの優しそうな人だ。

というか、街に出たらスカウトされるレベルのイケメン。

「では改めて。僕はスピネル・レイ。レイでいいよ。」

外人?

「あ、私は空木 萌々です。」

って、何普通に挨拶してんのよ私は。

「ところで、ヴァンパイアは知ってる?」

「何度か絵本で読んだことありますけど。」

「そうそれ。君の目の前にいる僕もね。」

何当たり前のように語ってるの?

「あの・・・頭、大丈夫ですか?」

それを聞いたレイさんはなんだか愉しそうだ。

「うん、まぁ最初は信じられないよね。」

いや、これホント信じる信じないの問題じゃないような・・・・・・・・・

この人おかしい人かな。

だったら病院に・・・・・・

でも、彼の言うことが妙に真実味を帯びているように思う。

それはきっと私の首にできた傷のせい。

私はその傷口にそっと手を当てた。

やっぱり痛かった。

深い穴が2つ。

でも何故か血は出てない。

「じゃあ、順番に話していくね。」


私は息を飲んだ。