翌日、靖美は来なかった。無断欠勤だった。


店を休むわけにもいかず開けたが、琉ヶ嵜はどんよりと落ち込んでいた。


「昨日はご馳走さまでした」


事情を知ったゆきと業平はお構いなしに元気だった。


「…ああ……」


「店長さん、振られたんですって??」


警官が一番嬉しそうだ。


「……結婚、…できません、だと」


うな垂れ、壁に向かってブツブツ呟く。


「そりゃそうでしょうよ!!妻子持ちだったなんて隠してたら」


「えっ!?妻子持ちの癖に靖美ちゃんにプロポーズしたんですかっ!?今度こそ死刑ですよ!!」


捕まえようと身を乗り出す。


「だからあ!!ち~が~う~ってんだろうが…ほんっっとうに身に覚えがねえんだあ」


「一口含んだ焼酎で記憶飛ぶ人が、何言ってんですか。説得力ゼロっすよ」


「それでも、最低限、それくらいは覚えてる!!………はずだ」


弱い。結局、靖美の唇の感触すら思い出せない。


「俺はバカだ。もう死んでしまいたい」


靖美の写真が載った本は小さい店なので10冊ほどだったが、瞬く間に売れて、最後の1冊になった。


他の応募受賞者も買いに来ていた。雑誌には珍しく、重版になるかも知れなかった。


自分への見せしめのように、面出しされている。