そしてその店に、彼女はいた。


何店舗かで利用できる食事券で、本店の近くにあり、比較的近場だったのでそこにしてみたのだ。


少し高級感のあるお洒落な焼き肉店。


4名まで割引になると書いてある。琉ヶ嵜と靖美、ゆきと業平の4人でちょうどよかった。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「えっ…?」


全員が一瞬固まる。
靖美にそっくりな女性が案内に出てきた。恐らく同年代。雰囲気も、髪の長さも、背格好まで。


「…琉さん…?!」


琉ヶ嵜の顔を見るなり女性も驚いた。


「奈都(ナツ)!?」


「えっ…??」


ほんの僅かな時間、時が止まったように動かなくなった2人。


と、駆けてきた1人の小学生くらいの女の子が、


「パパ!?」


「ぱ、ぱ、パパあ!?」


思わず、ゆきと業平の声が揃う。


黒目がちの、可愛らしい人形のような女の子だ。髪をツインテールにし、薄いピンクのフリフリの服がよく似合う。


「ぱ…」


琉ヶ嵜も言葉をなくす。


「す、すみません!うちの子が!!ダメでしょうここに来ちゃ!!ママお仕事中なのよ!?」


「だって、かずみ伯母さんが連れてきてくれたんだもん」


「琉ヶ嵜さん!?」


「げっ…」