戦利品の2頭の猪を、1頭は久我家に、もう1頭はお礼として森にお裾分けした琉ヶ嵜。


「有り難うございました!!貴重な体験できました!!」


まだ興奮冷めやらぬ中、深々と頭を下げ、意気揚々と山を降りた2人。


琉ヶ嵜は猟銃を肩に掛け、父を背負い、森が念のため口と手足を縛って網にくるんだ猪を引き摺って運んだ。


「また、いつでも遊びにおいで!」


すっかり森に気に入られた琉ヶ嵜。


家の前では3人が心配して居てもたってもいられず、今や遅しと待っていた。


手を上げて応える男2人。


「店長さん、すげえっす!!かっけえ!!」


見事な収穫に跳びはねた業平。


「貴様はワシを殺す気やったな?!」


気がつき開口一番に。
口の減らない親父だと呆れるが、もう慣れてきた。


「当たらない自信、ありましたし。俺が撃たないと死んでたかも知れないですよ?」


「そうやで?お父さん!!もうええ加減、素直に認めてあげな!!」


ふん、とそっぽを向く父。


「……仕方ないな。牡丹鍋、食わしたる」


聞こえるかどうかほどの蚊の鳴くような声で。


「有り難うございます!!」