目を開けると、靖美の顔がほぼ目の前にあった。


「のわっ!!??」


ガツン!!


思わず横飛びし、傍にあった棚に頭を思い切りぶつける。人の家なので、そんなところに棚があると思わない。


「いって!!」


「大丈夫ですか??」


寝ぼけ眼で頭を擦りながら、


「なんとか…な、なんだ?」


「朝ごはん、出来てますが、食べられそうですか?」


きょろきょろと時計を探す。7時半だ。


「ああ……もらおうか」


「わかりました、伝えます」


業務連絡のように無表情に言うと、ふいっと背を向け襖を開けて出ていこうとする。


「……あの」


「何か」


「…悪かった…」


「何がです??」


「何がって、えっと、その」


「失礼します」


しどろもどろになっているうちに、また背を向け、襖をピシャリと閉め、出ていってしまった。


「……怒ってるのか???」


靖美の、能面のような顔を初めて見たかもしれない。背筋が凍った。


ハッと気付くと、ろくに着替える余裕もなく寝てしまい、肌着とトランクス姿のあられもない格好だった。


改めて女性のように胸を隠すが意味がない。