これも恋と呼んでいいのか



無料で、半径2キロまで、個人宅にも車で配達していた。貰うのは本の代金だけだ。


電話などで希望があれば、可能な範囲で引き受ける。そういう細かいサービスも売りだった。


雨の日はビニール袋に入れ、留守ならポストに入れておくこともある。もちろん鍵つき前提だ。


改めて月末に集金に行くシステムだ。


近くの商店街も同様だった。床屋に置かれる週刊誌などは、午前中に配達し、支払いは月末に纏める。


「おじさん、この本ください」


「おじ…いらっしゃい」


一瞬、ピクリと反応するが、子供には罪はない。にこやかな笑顔で応戦する。


「有り難うございました」


言って店内を一周し、雑誌の整理をする。雨の日は客足が少ない。


それでも濡れた手で触るし、立ち読みなどでくしゃくしゃになる。


「あの辺から当たってみるか…」


店にはパソコンもない。伝票も書類も手書きだ。


携帯では調べるのも限界がある。手だてがなかった。