「あの人、地元では有名よ?実家がお金持ちで、独立して会社まで立ち上げたって」


「…地元…って、どこなんすか、実家」


「隣の県の、山の方」


それが何か?ときょとんとするゆき。改めて聞いたこともなかった。


履歴書には書いているだろうが、本店に保管され、紹介だけされて働くので、名前と年齢くらいしか知らない。


生い立ちや素性は、本人の気が向けば話してくれる。


「ずいぶん楽しそうに、腕組んでお買い物してましたよ?てっきり彼氏かご主人かと」


「あいつ……!!何やってんだ!!」


バン!!と机を叩き勢いよく立ち上がる琉ヶ嵜。


「えっ?えっ??えっ???」


初めて、本気で怒った琉ヶ嵜を見て驚くゆき。


「な、なんかまずいこと言った??」


「話せば長くなりますが。拉致られてんですそいつに、要は」


「はい!?」


「ずっと探してて。そいつの実家も部屋もわかってんのに、靖美が見つからなくて」


状況をざっくりと説明する業平。


「じゃあ、あの人の別荘は??」


「知ってるんですか??」


「もちろん。私の実家がその辺で、自治会の関係で…」


さすがに主婦のルートは強かった。