3年前の雨の日だった。
初めて靖美がこの店を訪れたのは。
「この本をください」
昼から降りだした雨は風、雷とともに強くなり、傘を差していてもずぶ濡れだった。
「どうしても欲しいんです」
鞄から濡れたメモを渡された琉ヶ嵜。
打たれたのは雷のせいだけでなかった。
「大きな書店さんに行けばあるかもしれないですよ?」
つい、口を突いて出てしまい後悔した。
「そうですか…」
背を向けて帰ろうとしたとき、咄嗟に、
「と、取り寄せ、しましょうか?お日にち頂きますが」
「いいんですか?」
近場に大きな書店もないらしく、あちこち探した様子だった。
もう一歩も動けなさそうだったその姿に、このまま帰すのは忍びないと感じた。

