閉店後。


少し高めの店を予約し、個室で食事した5人。


ここ数年行ってなかったが、どうせならと琉ヶ嵜の唯一知っている小綺麗な和食の店を選んだ。


「こんな高そうなところ、知ってるんですね!さすが店長さん」


靖美の言葉に少し照れる琉ヶ嵜。少しでも見栄を張りたかった。


「ふん、大したことないし」


阿智の負け惜しみを聞いたようで、密かにガッツポーズが出た。


「靖美にはまだ早い」


ビールを頼み、琉ヶ嵜に酌されて飲み始めるが、父は不満そうだ。


「靖美は、阿智くんのことが好きなのか?」


親子だ。こんなところで直球が出るとは。変なところで似ている。


「えっ!?いや、それは…」


口ごもる靖美。『好きな人ができた』発言もあった後で、琉ヶ嵜も気になるところではある。


が、


「店長さん、ご結婚は?」


さすがに母も、痛いところを突いてきた。


この年で、こんな店を知っていて、本来ならいるであろう家族に連絡もせず来ているのだから、気にはなるだろう。


「あっ、いや、ご縁がなくて…」


「ま、こんな年上と付き合うくらいやったら、阿智くんの方がましやけどな」


空気がどんどん不利になる。


「だから俺にしとけっていってんじゃん」


飲んでいたビールが回り始め、靖美に絡み出す阿智。