「店長さんは、どうしてご結婚されないんですか??」
夕方、配達から帰って奥の部屋で、椅子に座り掛けた琉ヶ嵜。入り口から靖美に聞かれ、椅子から落ちそうになる。
「ど、どうしてって。なんだいきなり」
「なんとなく、です」
この年で独りなのが不思議なようだ。
「恋とか、したことないんですか??」
「はっ!?」
普段ぼんやりしてるくせに、こんなところで、硬球を無邪気にど直球でぶつけられたようで、動揺する。
「な、ないことは、ないがな。なきゃおかしいだろう、むしろ」
「ですよね」
ふーん?という顔で小首をかしげて眺め、踵を返すと店内に戻る。また、ガクッとなる。
「あっ、今日は早めに上がりますね?予定があるので」
そういうことは出勤したときに言え、と言い掛けたが、さっきの言葉が気になってそれどころではなかった。
「あ、ああ、そうか…」
今日、改めて2人になってしまい、どうしていいのかわからず、ずっとうろうろと配達に出ていた琉ヶ嵜。
気持ちを落ち着かせ、何ごともないように帰ってきて。
あとは閉店までなんとなく過ごそうという思いもあった琉ヶ嵜は、なんとなく複雑だった。

