明日から産休に入るゆきが、靖美に引き継ぎをするために来ていた。ゆきも業平の仕事に驚く。


「私、もっといらなくなっちゃいますね」


さすがにちょっと拗ねる。


一通り作業を済ませ、奥の部屋で店を見ながらひと息つく。


「こんなに人がいるのも久し振りですね、棚卸しのとき以来」


温かい缶コーヒーを飲みながら、ゆきがほっこりする。


「そういえば、彼氏って言うのはどうなってるんですか?彼がお友達ってことは」


よく聞いてくれた、と初めてゆきに感謝した琉ヶ嵜。気にはなっていたが自分が改めて聞くのもおかしい。


「あれ?言ってませんでしたっけ??首になった家政婦先の、ご子息だったんです。それもあって、別れちゃいました」


また、あっけらかんと。


それは彼氏というのか!?この子は天然なのか!?


別れたのはいいのか悪かったのか。しかし今は業平がいる。


また混乱する琉ヶ嵜。


「じゃあ、ナリくんが彼氏に昇格する可能性は??」


いつの間にかナリくん呼ばわりだ。


「あっ、いらっしゃいませ」


男性客が週刊誌を持ってレジに来た。ゆかが対応に出る。