しかし金髪が意外にも、物覚えがよかった。しかも見た目に反して本の知識が凄かった。とくに小難しい書籍以外は。


しかも字が綺麗だ。なかなかの達筆で読みやすい。今どき女性でも癖字で読み辛い文字が多い中。


人は見かけによらないとはよく言ったものだ。


「何者なんだ一体…」


暇潰しに見た目録で、雑誌の発売日をほぼ暗記し、


店内のコミック、書籍に至るまで、場所といつ入荷したかを、1週間で覚えていた。


あくまでもサクラであり、給料も出ない立場でありながら。


「こういうの得意なんす。俺」


にこやかに言う金髪。


「あっ、業平(ナリヒラ)っす」


何だろうこの敗北感は。
20年、やってきたんだぞ俺は。


「久我!そこじゃねえっつってるだろう」


「はいっ、すみません」


靖美に当たってしまう琉ヶ嵜。
本当に要領が悪かった。
訳がわからなくなる。