309.5号室の海







それから月日が流れて、いくつかの季節が過ぎ去った頃、

私は初めて310号室の鍵を使った。

隣の309号室には、別の誰かが住んでいるのだろうか。

鍵穴に鍵を差し込んで、ゆっくり回す。
カチャッと音がしたのを確認して、鍵を抜いた。

緊張でうるさい心臓を抑えながら、静かにドアノブを掴んだ。