「私、星野ゆりっていいます。好きに呼んでくれていいよ」

「んーじゃあ、星さん!は、あの2人とどういう関係なんですか?」

「あの2人って、」

「そりゃあ、涼さんと千秋とですよ!」


なんだろう、気のせいかもしれないけど、2人の名前を言ったとき、一瞬でカナちゃんの雰囲気が変わったような。


「他のお客さんと比べて、なーんか違うような気がして。……ここ以外でも会ってるんですか?」

「え、っと」


カナちゃんの声が低くなって、まとう空気がひんやりと冷たくなった。
これは本当のことを言ってもいいのだろうか。
だけど隠しててもきっといつかバレることだ。千秋くん以外の従業員も蒼井さんの家に泊まることがあると言っていたし、そのうちカナちゃんの耳にも入るだろう。
そう考えたら、下手に隠したって仕方がない。


「実は私、蒼井さんの隣に住んでるんだ。あ、もちろん偶然ね?」

「……え?」

「初めてこのお店に来たときに蒼井さんを見かけて、びっくりして、それで」


カナちゃんの顔を見て、思わず固まってしまった。
さっきまでの笑顔はどこへいったのか、恨めしそうな、悔しそうな表情でキッと私を睨みつけている。

これは、もしかしてとは思ったけど。


「……へえ、隣に住んでるんだ」

「う、うん、そうなの」

「へえ。じゃあ引っ越して?」