あの日から、家に閉じこもっている。

楽しい先輩との帰り道が、あんなに憂鬱になるなんて。

数日前の私には考えられなかった。

「はあ・・・」

そろそろ、会社に行かなきゃな。

どーせ先輩の眼中には、もう私はいないわけだし。

堂々としてよう、堂々と。

小さなバッグに書類とスマホと財布を詰める。・・・これくらいで良いだろう。

もう、午後だし。私は鍵を片手に、家を出た。

「遅れてすいません。湯川です」

オフィスに入り、一礼。

先輩は・・・来てないみたいだ。

良かった、と胸を撫で下ろし、席に着く。


案の定、机には資料の山々。サボった報いが、そこにはあった。

けど、仕事をするのは嫌いではない。

私は一番上から、資料を1枚取り、書き込みとまとめを始めた。


仕事が片付き、家へ向かう。

今頃先輩は、何をしているのだろう?

明奈さんと、いるのだろうか?

そう思うと、胸が締め付けられるように痛くなった。


何度も諦めかけた、この恋。

考えるだけで苦しくて。

そして。

その何倍も、嬉しくて。

こんな素敵な恋、そして運命を、こんな簡単に手放していいのだろうか?

そのとき。私の頭には、先輩との思い出が、走馬灯のように駆け巡った。

一緒に手を繋ぎ、一緒に笑いあって、一緒に怒りあって。

不安ながらも、楽しい、楽しい日々だった。

ほんの偶然から始まったこの恋は、まだまだ続いていくであろう。

その一つ一つのページを、思い出を、今破くのが、本当に最善の方法なんだろうか?


ギュ、と拳を握りしめる。

もし、明日。明日があるのなら。

先輩に、言おう、謝ろう。

そして。

告白、するんだ。