「そう!?ほんとう!?ねえ、彼氏ほしい!?」

「う、うん。できれば・・・ね。もう、22歳だしね!」

私はうんうんと頷く。ふと、幸歩の方を見ると、ゴソゴソと鞄を探っている。

「? 何してんの?」

「いや、あのね、いいのがあって・・・」

じゃん、と得意げに言って、幸歩が鞄から取り出したのは、合コンのチケット二枚組だった。

「ご、合コン!?」

「そう!2人で一緒に恋しちゃおうよ☆」

えっ・・・。

とたんに先輩の顔が私の頭に浮かぶ。こんなに、こんなに好きなのに、考えると、胸がモヤモヤするのはどうしてだろう・・・?

「えっと・・・」

「彼氏、いないんだよね?それとも、好きな人でもできた?」

まあ、と答えると、幸歩はすぐさまこう返してきた。

「なら、やめた方がいいよ」

なんでだろう。幸歩に何がわかるのっ・・・?

その答えを返すように、幸歩はしずかに口を開いた。気まずそうだった。

「だ、だって・・・。中学時代のとき、アンタ、司のこと好きだったでしょ?

多分、司も好きだったとおもう、チキのこと。

けど、アンタが恥ずかしさのあまり避けてたせいで、付き合わないまま転校しちゃったじゃん。

・・・実は司、ずっと私に相談してきたんだよ?チキって誰が好きなの?って。

チキが好きなの?って聞いたら、ちげーよ!って、照れてるし・・・。

そんな司を、裏切ったってことなんだよ!?」


「裏切ったって、そんな、大袈裟な・・・」

「そういうことなんだよ!?」

幸歩の圧倒的な雰囲気に押されて、何も言えなくなる。

極めつけに幸歩が言った。

「とにかく、チキに片想いは無理。諦めた方が無難だよ?」

ずきん、と胸が痛くなる。親友にこんなこと言われるなんて・・・。

「っ・・・!私、帰るね!?」

くるりと踵を返し、珈琲店のドアを勢いよく開ける。

「! チキ!」

追いかけてくる幸歩の声から逃げるように、私は馬鹿みたいに走っていた。