青い兎は、とある海の砂浜を旅していました。

そこで出会ったのは、やや緊張しているヤドカリでした。


「やぁ、青い兎さん。こんなところで何をしているのかな?」


ヤドカリは、青い兎に尋ねました。

すると青い兎は、こう答えました。


「私は、旅の途中なんです」

「旅ですか。いいものですね」


ヤドカリは、そう言いました。

今度は、青い兎が尋ねます。


「あなたは、どこへ行くのですか?」

「私は、これから愛する者にプロポーズをしにいきます」


ヤドカリが緊張しながら答えました。


「それはいいですね。頑張ってください。
それでは、私は先を急ぐので失礼します」


そう言って青い兎は、歩き去ります。

ヤドカリは、それを見送ります。

ヤドカリが青い兎の背中に尋ねました。


「一つ尋ねてよろしいですか?」


青い兎は、振り返ります。


「なんでしょう?」

「兎は寂しいと、本当に死んでしまうのですか?」


ヤドカリの質問に、青い兎は、目を細めながら答えました。


「他の兎は、どうだか知りませんが、少なくとも私はそうでした」


その言葉に、ヤドカリはハッとしました。


「そうですか……旅、お気を付けてください。私は、まだそこへは行けません」

ヤドカリは、悲しそうに言います。

でも、青い兎は、笑顔で返しました。


「ええ、わかっていますよ」






青い兎は、旅を続けます。




いつか、生きている誰もが行く場所へ……


    【おわり】