ディスペア

「おねえちゃん、これあげる。さっきはありがとう!」

そう言って女の子がくれたのはポインセチアの花だった。
びっくりした。
そしてなんだか……泣きそうになった。
私は女の子から一輪の花を受け取って、微笑むと一言を残してこの場を立ち去った。

「これからは、気をつけてね。」

女の子は私の姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
無邪気な女の子の笑顔が嬉しかった。

  パシャ!

私は音が鳴った方向に目を向ける。
そこには優人がカメラを持って、立っていた。

「約束!」

優人はそう言うと、微笑んだ。
あの約束を本当に果たしてくれたのが嬉しくて……
私の目から一筋、涙が流れた。


 あとから優人がポインセチアの花言葉は『貴方の幸せを祈る』なんだよと教えてくれた。


 私たちは飲み物を飲んだあと、浜辺を歩いた。
二人、手を繋ぎながら。
海からの風は冷たかったけれど、優人の手はあったかかった。
そんな中、優人が呟いた。

「この生活のなかで、人を笑顔にしていかない?」

それは、私も思っていた事だった。
私はこの逃亡生活は無意味なものだと思っていた。
でも、今日私の手で女の子を救うことができた。
女の子を笑顔にすることができた。
もしもそれを続けていくことが出来たのならば、この旅はきっと意味を持つことが出来るだろう。
そう思っていたのだ。

「うん、私もそうしたい!」

そう言うと、優人は微笑んだ。

 午後5時、もうやって来た黄昏時。
さらに気温が下がる中、優しく二人の影が重なった。


 静かに雪が降ってきた。
寒さで指がかじかんできた。
そんなときでも、町の音楽は温かい。
 だんだん、この浜辺にも人が増えてきた。
どうやらクリスマスの夜にここにいたカップルは永遠に結ばれるらしい。
さっきまで波の音が響いていた浜辺は、今は人の声に溢れている。
たくさんの笑い声。


ふと耳に、音がはいってきた。
ラジオだ。
物珍しさに耳を傾ける。

"……死体遺棄事件の被疑者である学生2人の身柄を確保しました。少年は容疑を認めたものの、共に行動していた少女は『私は理由を知りません。彼についていっただけです。』と容疑を否認、その……"

そしてその事について語るカップル。

「この女も共犯じゃねーの?だって一緒にいたんでしょ?そんでさ~……」

 ラジオの事件の女の子は、本当になにも知らないのかもしれない。
でも一緒にいるだけで疑われることになる。

わかってた。
わかってたはずなの。