どんな時間も優人がいたから幸せだった。
優人がいなかったら私はこんな風に変わることはなかったんだよ。
全部、全部優人がいたから………

私は優人を 優人は私を 強く、強く抱きしめた。
その溢れる想いを両手に託して………
その手からは、痛いほど大きな愛が伝わってきた。

……………いやだ。
離したくない。
ずっとこのままがいい。
ずっと一緒にいたいよ。
でもダメだ。
離さなきゃ。
私からこの手を…………!

きっと大丈夫、このぬくもりを憶えていれば離れていても大丈夫。
私は震える両手を優人から引き剥がすように離した。

そして二人、見つめ合う。
どちらも逸らそうとしない。
目は濡れて、前なんか見えもしない。
でも、お互いがお互いの瞳に吸い込まれていた。
それがわかるからこそよけい泣けた。

こんなに涙が出るのは初めてだった。
きっと優人もそうだろう。
私たちは何も言わずだだ泣いて、泣いて……
声が漏れて、息が苦しくなっても涙はとまらない。
とにかくたくさん泣いた。
気を抜いたら崩れそうな足に力を込めて。


大勢の足音がコンクリートに響く。
私たちは最後まで何も言わなかった。
…………だって、言えないじゃない。
言ったら、私たちが手を離した時にできた境界線を壊してしまう。
そんなことは出来ない。
でも、最後はせめて………………

私は笑った。
精一杯の笑顔で。
ちゃんと笑えてたかは自身ないけど。


そうして私たちは別々の道を歩き出した。