ディスペア

彼が私と一緒にいると、彼も悪く思われる。
その事実が急に現実味を増した。
本当にもう、戻れないんだ………

でも、申し訳ないと思ういっぽうで少し嬉しかったりする。
だって、ずっと一緒にいられる。
私たちはこうなることを覚悟して来たのだから今更後悔しない。
前を向いて生きると決めた。

それに、私たちは幸せだった。
今、やっと二人で自由な世界を手に入れることが出来たのだから。


 そこからさらに少し歩くと、小さな洞穴があった。
外の風が当たらない分、少しだけ暖かく感じる。
 私たちはここで眠ることにした。
二人で寄り添って。
彼と触れあうところだけが異常に熱を帯びていた。


雨の音が頭に響いて目が覚める。
辺りはまだ真っ暗だった。
寒い。
さっきまでと違ってあたたかみがない。
ふと隣をみても誰もいない。
まだ前がぼやけて見える。
どうやら私は寝ぼけてるらしい。
あれ…?光?
あぁ、懐中電灯か。
優人、勉強してるんだ。
だって学校に通ってるもんねー。
あれ、もう行ってないんだっけ?
どうだっけ?ってかここどこだっけ?わからなくなってきたなぁ。


穏やかな波の音と小鳥のさえずりに背中を押されて私はそっと目を開けた。
隣では優人が寝息をたてている。
私はそっと立ち上がると浜辺に出た。
朝日に向かってそっとつぶやく。

「あれは、何だったんだろう?」

朝日はすべてわかって受けとめてくれるようだった。

「麻彩ちゃん、おはよ!」

優人が私の肩にそっと上着を掛けてくれた。……わからないな。
怖いな。
でも、ちゃんと聞かないと…!

「優人……」

「なに?」

そう言って優しく微笑んだ彼に私は質問を投げかける。

「昨日……昨日の夜、勉強してた?」

「…してないよ。」

彼は下を向いて答えた。

「そっか……」

そう言って私は優人に笑い掛けた。
もう、全部わかってしまった。
そっか、優人は優しいね。
そんなに優しい嘘をくれるのは優人だけだよ。


私はこのときから私たちの運命を悟っていたのかもしれない。