自分が言うのもなんだけど、俺のルックスは決して悪い方ではないはず。身長なんて高いほうだ。だから可愛らしい君とそれなりに釣り合いが取れているんだろうと思っていた。

 でもそんな見た目の要因なんて、君が俺に好意を寄せてくれる本質じゃなかったんだよね。彼女が言ってくれた『似た者同士』っていう表現。俺はそこに君と惹かれ合い、そして付き合い始めた主意があるんだと理解出来たんだ。

 表面的じゃなくて、心の深くから結ばれている。そんな君との繋がりに気付けた。
 どうやら俺が彼女の命の恩人なのなら、彼女は俺にとって君と引き合わせてくれた恩人だと言えるみたいだね。
 そう思えた俺の胸の内は嬉しさで溢れ返り、自然と穏やかな気持ちに浸っていったんだ。

 すっかり打ち解けあった俺達三人は、それからしばらく談笑を続けた。ただ彼女の定時検査の時間が訪れたために、楽しい時間は切り上げる運びとなってしまった。

 少し寂しそうな表情を浮かべた彼女に対して、君はまた会いに来るからと元気付けていたね。居心地の良さを感じていた俺も、その意見には素直に同意したんだ。

 ただやけに彼女が切ない表情を浮かべた事を覚えている。哀しい眼差しがひどく印象深かったからね。でもその時彼女が心に何を思っていたのか、俺には知る由も無かったんだ。


 病院から帰る途中、君もどこか沈んだ気持ちになっていたね。気にはなったけど、でも俺にはその理由を尋ねる事が出来なかった。

 痩せ細った彼女の姿を目の当たりにしたことで、急に不安が募ったとでもいうのだろうか。でも見た目以上に彼女は元気そうだったじゃないか。

 単純な男の考えなんて、そんなレベルなんだろうね。君と彼女の間に潜む根深い感情のわだかまりなんて、その時の俺には考えも及ばなかったんだからさ。

 その後彼女の体調が悪化した事から、君とそろって見舞いに行くことは無かったね。でも君が彼女に会いに行かなかった理由がそれだけじゃないって事に気付いていたなら、俺と君の未来は違った形になっていたのかも知れないね。

 けど俺はバカだからさ。君の気持ちにも、そして彼女の想いにも、全然気付いてあげる事が出来なかったんだ――。