地声の大きな彼女のおしゃべりは止まらない。俺の勝手な想像だけど、まるで生きている自分という存在を必死で確かめている様に見える。でもそうする事で、彼女はきっと自身が抱く不安感や恐怖心を紛らわしているのだろう。
決して強がっているわけではないけど、やっぱり彼女は自分の抱える病気が怖くて仕方ないんだ。
話を止めたら孤独に押し潰されてしまう。彼女の本能が生きる為に講じた手段が、恐らくはこの止まらない長話という現れなんだろうね。
ただそんな騒がしい病室の中で、彼女の長話しを笑顔で聞く君の姿がとても印象的だったんだ。
恐らく普段から君と彼女の関係は、今日の病室と同じなんだろう。激しく捲し立てる様にしゃべる彼女の話を、君は笑顔で受け止める。まったく正反対の性格をしているからこそ、逆に馬が合ったんだろうね。俺は時折話に加わりながらも、そんな君達二人の姿を微笑ましく見守っていたんだ。
でもその時ふと思ったんだ。君とグラウンドで初めて話した時も、自然に話しが弾んだんだってね。
俺と君はお互いにあまりおしゃべりする方じゃない。それなのにあの時は双方とも気取らないで胸の内を話す事が出来ていた。
本当に不思議だよ。もしかしたら彼女がこれ程までに饒舌になるのは、相手が君だからなんじゃないのか。そして俺が心を開けたのも、君だったからじゃないのだろうか。
楽しそうに彼女と話す君の横顔を眺めながら、俺はそんな事を考えていた。
するとそんな俺の態度に何かを感じ取ったんだろう。彼女は口元を不敵に緩めて冷やかす様に告げたんだ。
「もうすっかり二人は恋人同士なんだね」ってさ。
俺と君はそろって赤面してしまった。彼女のあまりにもストレートな表現に対し、急に気恥ずかしさを感じてしまったんだ。
どうにも居た堪れない気持ちになった俺は君に視線を向けた。君ならこの状況を無難に切り抜けられると思ったからね。
でも同時に君も俺を見つめていたんだ。そしてお互いの視線が絡み合った瞬間に察した。君も俺と同じ様に戸惑っているんだとね。
妙な部分で重なってしまった波長に、俺と君は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。するとそんな俺達の尻込みする姿を眺めた彼女は大声で笑ったんだ。
「似た者同士のラブラブなカップルだね」って言いながらね。
彼女から見た俺と君は、もう普通に交際するカップルとして映ったんだろう。そして彼女は自分なりの表現で俺達を祝福してくれたんだ。
「私がこんなにもつらい思いをしているのに、二人は楽しんでいるんでしょ」って、少し皮肉を付け加えながらね。
でもその眼差しは温かいものに感じられたんだ。そして彼女は穏やかに続けたんだよね。
「すごくお似合いだよ」ってさ。
赤面していた表情が、さらに赤く上塗りされてゆく。そんな錯覚を感じるほどの恥ずかしさを覚えたけど、でもそれは純粋に嬉しかったからなんだろうね。
俺達の交際を認め、そして応援してくれる人がここに居る。初めてそう思えたから、俺は心から嬉しさを噛みしめたんだ。
決して強がっているわけではないけど、やっぱり彼女は自分の抱える病気が怖くて仕方ないんだ。
話を止めたら孤独に押し潰されてしまう。彼女の本能が生きる為に講じた手段が、恐らくはこの止まらない長話という現れなんだろうね。
ただそんな騒がしい病室の中で、彼女の長話しを笑顔で聞く君の姿がとても印象的だったんだ。
恐らく普段から君と彼女の関係は、今日の病室と同じなんだろう。激しく捲し立てる様にしゃべる彼女の話を、君は笑顔で受け止める。まったく正反対の性格をしているからこそ、逆に馬が合ったんだろうね。俺は時折話に加わりながらも、そんな君達二人の姿を微笑ましく見守っていたんだ。
でもその時ふと思ったんだ。君とグラウンドで初めて話した時も、自然に話しが弾んだんだってね。
俺と君はお互いにあまりおしゃべりする方じゃない。それなのにあの時は双方とも気取らないで胸の内を話す事が出来ていた。
本当に不思議だよ。もしかしたら彼女がこれ程までに饒舌になるのは、相手が君だからなんじゃないのか。そして俺が心を開けたのも、君だったからじゃないのだろうか。
楽しそうに彼女と話す君の横顔を眺めながら、俺はそんな事を考えていた。
するとそんな俺の態度に何かを感じ取ったんだろう。彼女は口元を不敵に緩めて冷やかす様に告げたんだ。
「もうすっかり二人は恋人同士なんだね」ってさ。
俺と君はそろって赤面してしまった。彼女のあまりにもストレートな表現に対し、急に気恥ずかしさを感じてしまったんだ。
どうにも居た堪れない気持ちになった俺は君に視線を向けた。君ならこの状況を無難に切り抜けられると思ったからね。
でも同時に君も俺を見つめていたんだ。そしてお互いの視線が絡み合った瞬間に察した。君も俺と同じ様に戸惑っているんだとね。
妙な部分で重なってしまった波長に、俺と君は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。するとそんな俺達の尻込みする姿を眺めた彼女は大声で笑ったんだ。
「似た者同士のラブラブなカップルだね」って言いながらね。
彼女から見た俺と君は、もう普通に交際するカップルとして映ったんだろう。そして彼女は自分なりの表現で俺達を祝福してくれたんだ。
「私がこんなにもつらい思いをしているのに、二人は楽しんでいるんでしょ」って、少し皮肉を付け加えながらね。
でもその眼差しは温かいものに感じられたんだ。そして彼女は穏やかに続けたんだよね。
「すごくお似合いだよ」ってさ。
赤面していた表情が、さらに赤く上塗りされてゆく。そんな錯覚を感じるほどの恥ずかしさを覚えたけど、でもそれは純粋に嬉しかったからなんだろうね。
俺達の交際を認め、そして応援してくれる人がここに居る。初めてそう思えたから、俺は心から嬉しさを噛みしめたんだ。
