中学に入学して出会ってから、君と彼女は共に汗を流して来た。初めは知らなかったようだけど、でも比較的早い時期に君は彼女の病気を知ったんだよね。
それから君は彼女と肩を並べて歩む事を決めた。君は誰よりも近くで彼女を支え、そして彼女の生きる時間を有意義なものにしょうと決意したんだ。
それって凄すぎるよ。中学生なんてまだ子供だ。それなのに君は彼女をしっかりと見守り続けたんだ。話す以上に生易しい事じゃなかったはずだよね。
同じ歳にも関わらず、俺は君のことを心から尊敬したよ。でも俺が君に向けた敬意は、もっと深い心情についてだったんだ。
君は肩を震わせてたね。そしてその瞳からは涙がこぼれていたよね。そんな君を前に正直俺は身震いしたよ。だって君の口からそんな想いが告げられるとは思いもよらなかったから。でも君は俺に本心を全てさらけ出してくれた。
たぶん自分の心に潜んだ暗い影に、君自身が一番傷ついていたんだろう。君はそれに耐えられなくなった。そして俺に歪んだ胸の内を吐き出したんだ。あの日、彼女の命の重みを共に背負った俺だけに――。
君は彼女が体を丈夫にすることを理由として陸上競技に励んでいるんだと知った。
もともと君はそこまで運動が得意というわけではない。そんな君だからこそ、病弱な彼女と一緒にいれば、適度な運動量で部活に参加出来ると考えたんだろう。でも皮肉なモンだね。陸上の神様は彼女に才能を与えたんだ。
彼女はメキメキと記録を伸ばしていく。まるでか細い命を更に削り研ぐ様にして。そして君はそんな彼女に対して嫉妬していたんだね。
どうあがいたって、その背中には追いつけない。肩を並べて歩み出したつもりが、いつしかずっと差を広げられている。そんな感覚に君は醜くも嫉ましく、心を黒く塗り潰していたんだ。それも無意識の内にね。
体は至って丈夫なのに運動センスの無い君と、体に爆弾を抱える身でありながらも才能を発揮する彼女。
君はその図式に絶望していたんだね。でもそれが良くない想いだという事も理解していた。だって君の本質は、人一倍優しいはずなんだから。
ただそれでも君は心のどこかで期待してしまったんだろう。いつか自分の目の前で、才能溢れる彼女が為す術無く倒れるという事を。だから君は彼女のそばに居続けたんだ。
したたかな女。少なくとも俺はそうは思わなかったよ。だって他人を羨ましがる気持ちなんて、誰しもが持っているはずの感覚なんだからさ。
それに君は彼女の事を心の中でやっかみながらも、実際には彼女のことを誰よりも助け力になっていた。それは否定しようがない【現実】なんだ。そんな事、他の誰に出来たって言うんだ。
そして何より倒れた彼女が一番君に感謝しているはずなんだ。それはいつも楽しそうに幅跳びの練習をしていた彼女の姿から確信することが出来る。きっと彼女は幅跳びで記録を出す以上に、君と共有する時間全てに喜びを感じていたはずなんだから。
俺はそう意見を伝えた。すると君は人目をはばからずに大声で泣き始めたんだ。まるで迷子にでもなった幼子の様にね。
その姿に少し当惑したけど、でも俺は君を静かに見守り続けたんだ。その涙が枯れ果てた時に、きっと君の心を覆う濃い霧が吹き消されているんだと思えたから。
それから君は彼女と肩を並べて歩む事を決めた。君は誰よりも近くで彼女を支え、そして彼女の生きる時間を有意義なものにしょうと決意したんだ。
それって凄すぎるよ。中学生なんてまだ子供だ。それなのに君は彼女をしっかりと見守り続けたんだ。話す以上に生易しい事じゃなかったはずだよね。
同じ歳にも関わらず、俺は君のことを心から尊敬したよ。でも俺が君に向けた敬意は、もっと深い心情についてだったんだ。
君は肩を震わせてたね。そしてその瞳からは涙がこぼれていたよね。そんな君を前に正直俺は身震いしたよ。だって君の口からそんな想いが告げられるとは思いもよらなかったから。でも君は俺に本心を全てさらけ出してくれた。
たぶん自分の心に潜んだ暗い影に、君自身が一番傷ついていたんだろう。君はそれに耐えられなくなった。そして俺に歪んだ胸の内を吐き出したんだ。あの日、彼女の命の重みを共に背負った俺だけに――。
君は彼女が体を丈夫にすることを理由として陸上競技に励んでいるんだと知った。
もともと君はそこまで運動が得意というわけではない。そんな君だからこそ、病弱な彼女と一緒にいれば、適度な運動量で部活に参加出来ると考えたんだろう。でも皮肉なモンだね。陸上の神様は彼女に才能を与えたんだ。
彼女はメキメキと記録を伸ばしていく。まるでか細い命を更に削り研ぐ様にして。そして君はそんな彼女に対して嫉妬していたんだね。
どうあがいたって、その背中には追いつけない。肩を並べて歩み出したつもりが、いつしかずっと差を広げられている。そんな感覚に君は醜くも嫉ましく、心を黒く塗り潰していたんだ。それも無意識の内にね。
体は至って丈夫なのに運動センスの無い君と、体に爆弾を抱える身でありながらも才能を発揮する彼女。
君はその図式に絶望していたんだね。でもそれが良くない想いだという事も理解していた。だって君の本質は、人一倍優しいはずなんだから。
ただそれでも君は心のどこかで期待してしまったんだろう。いつか自分の目の前で、才能溢れる彼女が為す術無く倒れるという事を。だから君は彼女のそばに居続けたんだ。
したたかな女。少なくとも俺はそうは思わなかったよ。だって他人を羨ましがる気持ちなんて、誰しもが持っているはずの感覚なんだからさ。
それに君は彼女の事を心の中でやっかみながらも、実際には彼女のことを誰よりも助け力になっていた。それは否定しようがない【現実】なんだ。そんな事、他の誰に出来たって言うんだ。
そして何より倒れた彼女が一番君に感謝しているはずなんだ。それはいつも楽しそうに幅跳びの練習をしていた彼女の姿から確信することが出来る。きっと彼女は幅跳びで記録を出す以上に、君と共有する時間全てに喜びを感じていたはずなんだから。
俺はそう意見を伝えた。すると君は人目をはばからずに大声で泣き始めたんだ。まるで迷子にでもなった幼子の様にね。
その姿に少し当惑したけど、でも俺は君を静かに見守り続けたんだ。その涙が枯れ果てた時に、きっと君の心を覆う濃い霧が吹き消されているんだと思えたから。
