昨日までの荒みきった緊張感から解放されたからなのか、それとも久しぶりに長距離を走った疲れの影響なのか。いや、たぶんその両方なんだろう。
猛烈な睡魔に侵されて俺の意識は夢の中へと誘われた。でもそこで俺が改めて夢に見たのは、紛れもない君の姿だったんだよね。そして君は昨日見た夢と同じに微笑んでくれた。穏やかに語り掛けてくれたんだ。
そう、あの『許しの言葉』と一緒に。
俺はそんな君からの言葉に笑顔で頷いて見せた。快く受け入れたんだよ。君の言葉と気持ちをね。
でも俺は君に対して頷く事しか出来ず、こっちからは何の言葉も伝えられなかった。
ずっと言おうと心に仕舞っておいた大切な言葉を、結局夢の中でさえ告げられずにいたんだ。
不甲斐ない。夢の中だっていうのに、どうして俺はいつまでもウジウジしているばかりなんだろうか。恥ずかしい気持ちに心が締め付けられる。
だけど悪い気分ばかりじゃない。いや、それどころか俺の心は前向きに想いを馳せるばかりだったんだ。
だって夢の中の君に伝えたところで、なんの意味も成さないのだからね。
やっぱり現実の世界で君に直接伝えなければ意味が無い。それを俺は明確に把握していたんだよ。
だから俺は夢の中の君に対して穏やかに向き会えたんだよね。
携帯が奏でるいつもの無機質な音楽で俺は目を覚ます。
目覚まし機能は相変わらず生真面目に仕事を熟すもんだ。
俺は含み笑いを浮かべながら、そんな携帯を手に取った。まるで羽根でも背中に生えたのかって勘違いするほどに軽く感じる体を起こしながら。
それからというもの、夜間のバイトが終わってからの早朝ジョギングが俺の日課となった。
走り終えた後の何とも言えない充実感を覚えてしまったからね。それにねじ曲がってしまった俺の心情が、少しづつだけど矯正されていく様な、そんな胸のすく気持ちになれたんだよ。
ただ走り出す前はいつだって身がすくむ思いに悩まされる。
どうして俺は自分からつらいランニングなんてしようとしているのか。こんな事を続けたところで、誰からも褒めたりはされない。一日くらいサボった所で、非難される相手もいないんだ。だから無理に走る必要なんてないのだと、俺の心は常に訴え続けていたんだよ。
でも俺は走ったんだ。嫌がる胸の内に抵抗し、冷え込みの厳しい外の世界へと毎日飛び出して行ったんだよね。
猛烈な睡魔に侵されて俺の意識は夢の中へと誘われた。でもそこで俺が改めて夢に見たのは、紛れもない君の姿だったんだよね。そして君は昨日見た夢と同じに微笑んでくれた。穏やかに語り掛けてくれたんだ。
そう、あの『許しの言葉』と一緒に。
俺はそんな君からの言葉に笑顔で頷いて見せた。快く受け入れたんだよ。君の言葉と気持ちをね。
でも俺は君に対して頷く事しか出来ず、こっちからは何の言葉も伝えられなかった。
ずっと言おうと心に仕舞っておいた大切な言葉を、結局夢の中でさえ告げられずにいたんだ。
不甲斐ない。夢の中だっていうのに、どうして俺はいつまでもウジウジしているばかりなんだろうか。恥ずかしい気持ちに心が締め付けられる。
だけど悪い気分ばかりじゃない。いや、それどころか俺の心は前向きに想いを馳せるばかりだったんだ。
だって夢の中の君に伝えたところで、なんの意味も成さないのだからね。
やっぱり現実の世界で君に直接伝えなければ意味が無い。それを俺は明確に把握していたんだよ。
だから俺は夢の中の君に対して穏やかに向き会えたんだよね。
携帯が奏でるいつもの無機質な音楽で俺は目を覚ます。
目覚まし機能は相変わらず生真面目に仕事を熟すもんだ。
俺は含み笑いを浮かべながら、そんな携帯を手に取った。まるで羽根でも背中に生えたのかって勘違いするほどに軽く感じる体を起こしながら。
それからというもの、夜間のバイトが終わってからの早朝ジョギングが俺の日課となった。
走り終えた後の何とも言えない充実感を覚えてしまったからね。それにねじ曲がってしまった俺の心情が、少しづつだけど矯正されていく様な、そんな胸のすく気持ちになれたんだよ。
ただ走り出す前はいつだって身がすくむ思いに悩まされる。
どうして俺は自分からつらいランニングなんてしようとしているのか。こんな事を続けたところで、誰からも褒めたりはされない。一日くらいサボった所で、非難される相手もいないんだ。だから無理に走る必要なんてないのだと、俺の心は常に訴え続けていたんだよ。
でも俺は走ったんだ。嫌がる胸の内に抵抗し、冷え込みの厳しい外の世界へと毎日飛び出して行ったんだよね。
