「君が花宮君か。歳三から話しは聞いたよ。俄かに信じがたいが、歳三が大丈夫と言うならそうなのだろう。安心したまえ。前川と八木のご主人には話しを通して来た。君はこの新撰組が責任を持って預かる!」


土方さんが、局長近藤勇を連れて部屋に戻って来た。
角ばった輪郭に大きな口。どっしりとした態度は教科書で見た人物と大差ない。
話す感じは良い人そのものだ。




「申し訳ありません。お世話になります。私に出来る事なら何でもしますので、あ、むしろ何かお仕事を戴けると有り難いんですけど……」


働かざる者食うべからずってね。
それにじっとしてるのは性に合わない。
私がお願いすると、近藤さんはそれなら……と提案してくれた。



「食事係……ですか?」


「うむ。実のところ、毎日二、三人ずつの隊士が当番で自炊しているのだが、献立と味が日々命懸けでね。いや、上手く作れる隊士も居るのだが何分男所帯だ。そりゃもう酷い味付けの日が多いの何の……君がそれを管理してくれるなら我々としても非常に有り難いんだが、どうだろうか?」



近藤さんの後ろで土方さん達まで色々思い出したのか苦痛な表情を浮かべながら何度も首を縦に振っていた。



「な、何だか急を要する事態みたいなので私でよければお引き受けします。」


「そうかそうか!有り難い。では早速今夜の夕餉からお願いしよう。と、その前に君のその格好をどうにかしないとね。」


そうか。確かにスーツじゃ一目を引くわね。
自分の格好を見て彼等を見ると明らかに場違いなのが分かる。そんな私に土方さんは風呂敷に包まれた荷物を差し出した。