いったいどうなっているんだろう、この状況って。昨夜も気になったことだけど、どうも先生の口ぶりが……。なんていうか、その……これからしばらく同居するつもり、みたいな? それでもって、さっきの発言だし。

(保坂先生、いったい何を考えているんだろう???)


「お客様、お気に召すものはございましたか?」

「えっ」

取り残された私がぽかーんとしていると、店員さんからにこやかに声をかけられた。

(あ。この人きっと、先生と話していた人だ)

「今日はパジャマをお探しだと、先ほど伺いました。保坂様から」

「はぁ……」

(この店員さん、プロっぽいなぁ。私、完全にロックオンされちゃったよね)

「こちらの商品などいかがでしょう? あ、でも……」

「え?」

「保坂様の“お姉様”とお揃いになってしまいますね」

「お姉様、ですか……?」

その言葉に、一瞬耳を疑った。

「はい。以前にご姉弟でご来店くださったことが。モデルさんのように背が高くて、とてもおキレイな方で。最近はあまりお顔を見せに来てくださらなくて残念です」

「そうなんですね……」

お兄さん二人の他にお姉さんもいたと思えば納得のはずなのに。なんだろう? この心にひっかかる感じは。けど、店員さんの話しぶりからすると、お姉さんに間違いないようだし。なのに、このモヤモヤ感っていったい?

「いかがでしょう、同じ素材でこういったデザインのものも素敵ですよ?」

「えっ。あ、はいっ」

店員さんは私のことを完全に“友人”という名の“彼女”だと思っているようで、なんだかすごく困ってしまう。勘違いさせちゃってる店員さんにも悪いし。それに、保坂先生にも申し訳なくて。こんなのが彼女だなんて……うん。

そんなこんなでパジャマを見ている間に、保坂先生がやや急ぎ足で戻ってきた。

「申し訳ない。で、決まりましたか?」

「えっ」

や、やっぱり買ってくれちゃうんだ……。

「ちょうど今、こちらの商品をおすすめしていたところなんですよ」

「なるほど。いいじゃないですか。清水さんは、どうですか?」

いや、どうと言われましても。そりゃあ素敵に決まってますよ。肌触りもとっても優しそうで、縫製だってとっても丁寧で。おまけにネット洗いOKだなんて。

「この色、清水さんに似合いますよ。これにしましょう」

「えっ。あ、えーとっ……」

そうして私がまごまごしているうちに、先生はさっさとお買い上げを決めてしまった。

「あのっ……」

「よかった。いい買い物ができて」

先生の笑顔はとても朗らかで優しかった。だからもう――。

「ありがとうございます。大事にします」

ごちゃごちゃ言わずに、先生の親切に甘えることにした。

「ちゃんと着てください」

「はい?」

「清水さんは“着るのがもったいない”などと言い出しかねないから」

真面目な顔でそんなことを言う先生に、私は――。

「大丈夫です。ガンガン着まくって着倒しますから」

笑って答えながらも、内心では胸がきゅんとして、ちょっぴり泣きたい気さえした。