それにしても、4LDKという間取りの広々なこと。

先生は「とりあえず簡単に説明しておきますね」と、部屋を一通り案内してくれた。

新築っていいなぁ、すべてがピカピカなんだもの。

キッチンなんてキレイな上に食洗機もあって使い勝手がよさそうだし。

和室の他の3つのお部屋は、1つは寝室で、もう1つは仕事部屋、そして玄関を入ってすぐの北側の部屋は――。


「この部屋だけは絶対に入らないでください」


先生はまるで「ここからは立ち入り禁止」とでもいうようにドアの前に立つと、ポケットの小銭入れから10円玉を取り出して見せた。


「間違ってしまうこともあるかもしれないので、とりあえず開かないようにしておきましょう」


そのドアの鍵はトイレや浴室と同じように内側からだけロックできる簡単なタイプのもので、先生が硬貨を使ってドアノブ付近のネジのような部分を回すと、カチャリといって鍵がかかった。


「決して清水さんを信用していないとかではないので。どうか気を悪くしないでください」

「大丈夫です。ちゃんとわかっていますので」


信用していないなら、わざわざ鍵の掛け方なんて見せたりしないでしょうし。

私のことを信用しているという先生の気持ちを、こちらこそ心から信頼していた。


「ここは少しの間ですが兄が使っていた部屋でして」

「お兄さんが?」

「はい。下の兄です。いろいろあって今は別のところにいるのですが、部屋も荷物もそのままという状態で」

「そうなんですね」

「他の部屋はどこでも自由にどうぞ。グレとかくれんぼでも何でもして下さい。そうだ、冷蔵庫も遠慮せずに勝手に開けて好きにしてください」

「あの……ありがとうございます」


たった一晩お世話になるだけなのに、先生はとても丁寧に具体的に説明してくれた。

まるで、その……これからしばらく一緒に暮らすみたいに。