白衣とエプロン①恋は診療時間外に

“しどけない格好”から“あられもない姿”への移行(?)は早い。

何を隠そう、脱がされることに協力的な私である。

それに、今日は協力的というよりむしろ積極的に近い心意気というか。

(だって、どうにも“気が急いていて”……)

もう、みんなみんな彼のせい。

彼が――。

可愛いことを言うから。

嬉しいことを言って喜ばせるから。

わがままな私も恥ずかしい私も、隠しておきたい私のすべてを暴いてしまうから。

どうしようもない私を、まるごと全部抱きしめてくれるから。

彼が、彼が、彼が――。

いつもそうして、彼は冷静と情熱のあいだに留まって、私が完全に理性を失うその瞬間を見届ける。

だからいつだって、後戻りできない場所へ先に来るのは、私ばかり――。

「……秋彦さんのせいです」

「何がだろう?」

私は気恥ずかしくて、視界を遮るように手首で目元を覆った。

「何がって……いろいろ全部ですよ」

「そう言われても」

「私ばっかり“気が急いている”みたいじゃないですか」

「そんなことはないさ」

「そんなことありますよ」

私ばっかり全裸だし、私ばっかり恥ずかしいとこみられて、私ばっかりダメになって……。

「君は」

「はい?」

「僕に余裕があるとでも?」

(あぁっ……)

彼は手首をつかんで私の表情(かお)をあらわにすると、さらに続けた。

「君のせいだからね」

静かだけれど熱っぽい眼差しが私をとらえて離さない。

「“気が急いて”優しくできなくても」

(そんなっ……)

胸がきゅうっと甘く痺れて声が出ない。

なのに、彼はさらに切なく私を追いつめる。

「続きをしてもかまわない?」

(かまわないも何も……)

私はなんだかもうどんな顔をしていいのわからなくて。

ぷいと視線をそらして、どぎまぎしながら精一杯の強がりを見せた。

「……望む、ところです」

(私のバカ!)

可愛くないにもほとがある。

そして、彼は――。

「嬉しいね、その心意気」

私に甘いにもほどがある。

「では、いい子で少しだけ待っていて下さい」

子どもの患者さんにだってこんな言い方しないのに。

「それと――」

彼はちょっと決まり悪そうに、だけどまっすぐに言った。

「ちゃんと優しくするから」

(もう、この人は……)

決して暴君になどなれない優しい人。

「……いい子にしていたら、ご褒美ありますか?」

「僕にあげられるものならなんでも」