“しどけない格好”から“あられもない姿”への移行(?)は早い。
何を隠そう、脱がされることに協力的な私である。
それに、今日は協力的というよりむしろ積極的に近い心意気というか。
(だって、どうにも“気が急いていて”……)
もう、みんなみんな彼のせい。
彼が――。
可愛いことを言うから。
嬉しいことを言って喜ばせるから。
わがままな私も恥ずかしい私も、隠しておきたい私のすべてを暴いてしまうから。
どうしようもない私を、まるごと全部抱きしめてくれるから。
彼が、彼が、彼が――。
いつもそうして、彼は冷静と情熱のあいだに留まって、私が完全に理性を失うその瞬間を見届ける。
だからいつだって、後戻りできない場所へ先に来るのは、私ばかり――。
「……秋彦さんのせいです」
「何がだろう?」
私は気恥ずかしくて、視界を遮るように手首で目元を覆った。
「何がって……いろいろ全部ですよ」
「そう言われても」
「私ばっかり“気が急いている”みたいじゃないですか」
「そんなことはないさ」
「そんなことありますよ」
私ばっかり全裸だし、私ばっかり恥ずかしいとこみられて、私ばっかりダメになって……。
「君は」
「はい?」
「僕に余裕があるとでも?」
(あぁっ……)
彼は手首をつかんで私の表情(かお)をあらわにすると、さらに続けた。
「君のせいだからね」
静かだけれど熱っぽい眼差しが私をとらえて離さない。
「“気が急いて”優しくできなくても」
(そんなっ……)
胸がきゅうっと甘く痺れて声が出ない。
なのに、彼はさらに切なく私を追いつめる。
「続きをしてもかまわない?」
(かまわないも何も……)
私はなんだかもうどんな顔をしていいのわからなくて。
ぷいと視線をそらして、どぎまぎしながら精一杯の強がりを見せた。
「……望む、ところです」
(私のバカ!)
可愛くないにもほとがある。
そして、彼は――。
「嬉しいね、その心意気」
私に甘いにもほどがある。
「では、いい子で少しだけ待っていて下さい」
子どもの患者さんにだってこんな言い方しないのに。
「それと――」
彼はちょっと決まり悪そうに、だけどまっすぐに言った。
「ちゃんと優しくするから」
(もう、この人は……)
決して暴君になどなれない優しい人。
「……いい子にしていたら、ご褒美ありますか?」
「僕にあげられるものならなんでも」
何を隠そう、脱がされることに協力的な私である。
それに、今日は協力的というよりむしろ積極的に近い心意気というか。
(だって、どうにも“気が急いていて”……)
もう、みんなみんな彼のせい。
彼が――。
可愛いことを言うから。
嬉しいことを言って喜ばせるから。
わがままな私も恥ずかしい私も、隠しておきたい私のすべてを暴いてしまうから。
どうしようもない私を、まるごと全部抱きしめてくれるから。
彼が、彼が、彼が――。
いつもそうして、彼は冷静と情熱のあいだに留まって、私が完全に理性を失うその瞬間を見届ける。
だからいつだって、後戻りできない場所へ先に来るのは、私ばかり――。
「……秋彦さんのせいです」
「何がだろう?」
私は気恥ずかしくて、視界を遮るように手首で目元を覆った。
「何がって……いろいろ全部ですよ」
「そう言われても」
「私ばっかり“気が急いている”みたいじゃないですか」
「そんなことはないさ」
「そんなことありますよ」
私ばっかり全裸だし、私ばっかり恥ずかしいとこみられて、私ばっかりダメになって……。
「君は」
「はい?」
「僕に余裕があるとでも?」
(あぁっ……)
彼は手首をつかんで私の表情(かお)をあらわにすると、さらに続けた。
「君のせいだからね」
静かだけれど熱っぽい眼差しが私をとらえて離さない。
「“気が急いて”優しくできなくても」
(そんなっ……)
胸がきゅうっと甘く痺れて声が出ない。
なのに、彼はさらに切なく私を追いつめる。
「続きをしてもかまわない?」
(かまわないも何も……)
私はなんだかもうどんな顔をしていいのわからなくて。
ぷいと視線をそらして、どぎまぎしながら精一杯の強がりを見せた。
「……望む、ところです」
(私のバカ!)
可愛くないにもほとがある。
そして、彼は――。
「嬉しいね、その心意気」
私に甘いにもほどがある。
「では、いい子で少しだけ待っていて下さい」
子どもの患者さんにだってこんな言い方しないのに。
「それと――」
彼はちょっと決まり悪そうに、だけどまっすぐに言った。
「ちゃんと優しくするから」
(もう、この人は……)
決して暴君になどなれない優しい人。
「……いい子にしていたら、ご褒美ありますか?」
「僕にあげられるものならなんでも」



