白衣とエプロン①恋は診療時間外に

予期せぬクエスト発生(?)があったりしたけど、結果的には楽しい休日を満喫できた。

彼がお昼に連れて行ってくれたお店は、お料理もとっても美味しくて、居心地もよくて。

しかも、そこは彼の学生時代からの馴染みの店ということで。

とっておきの場所へ連れてきてもらえたという特別感が、私をいっそう喜ばせた。

楽器店も、正直言うと今まではまるで無縁の場所だったけれど、生の楽器を間近で見られるだけでもう大興奮で。

音符や楽器をモチーフにした雑貨やアクセサリーのコーナーでは、その可愛らしいさと美しさに夢中になった。

職人さんと真剣に楽器の相談をする彼の姿は、なんだか新鮮で、また1つ彼の世界を知った気がして嬉しかった。

そんなこんなで、はしゃぎすぎたせいか帰りの車の中ではすっかり眠ってしまって……。

あれこれたくさん話したかったのに、まるで瞬間移動のようにいつの間にか自宅へ到着したしまつ。

「なんかすみません……」

彼だって疲れていたでしょうに、運転まかされきりだったし。

「気にしないで。それより、夕飯はどうしようか? とりあえずどこへも寄らずに帰ってきてしまったのだが」

「家にあるもので何か。あ、お蕎麦とかおうどんとかどうです? 材料もあるし時間もかからないし」

「いいね、お蕎麦。昼は洋食だったから夜は和食で」

「じゃあ、私が」

せめてもの罪滅ぼしと、素敵な休日のお礼に。

なんて、返すにはぜんぜん足りてないけど。

「じゃあ、僕は風呂掃除かな」

「あ、それも私があとでっ」

「いいよいいよ。それより――」

眼鏡の奥の静かな瞳が私を見つめる。

「明日は仕事なんだけど」

「はい」

「今夜、時間あるかな?」

(えっ)

“今夜、時間ある?”というのは、ふたりの間では特別な意味をもっていて。

つまり、それはその……「今夜“そういうことをする”時間を持ちませんか?」という意味で。

彼がこれを言うのは、決まって翌日がお休みの日。

それ以外の日はいつも、翌日の仕事に備えて速やかに就寝するのが暗黙の了解になっていた、のだけど???

「秋彦さんが時間あるなら、私は時間ありますけど」

あなたがよいなら私もよいですよ、の意。

正直「どうしたのかな?」と気にはなる。

けれども、素直に「やぶさかではないですよ」とも。

「私はほら、車で爆睡したからけっこう元気ですし?」

「ならよかった」

ちょっと安心したように微笑む彼が愛くるしい。

「じゃあ、ちょっ早でご飯の支度しますね!」

「しゃあ、僕もはりきって風呂掃除してくるかな」