白衣とエプロン①恋は診療時間外に

本当、何を考えているのかまったくわからない。

わからないからこそ、とても怖い。

「ボクはキミに興味があるんだよ」

笑っているようでいて、目は笑っていない。

まるで作り物のような笑顔に、いっそう警戒心が増す。

「ご冗談ばっかり。貴志先生が私に興味を持たれるわけないです」

「まあ、確かに。最初から興味があったわけじゃないな」

貴志先生は一瞬「ふーむ」と何やら思案する表情をしたけれど、再び一方的に話し始めた。

「本当、最初はぜんぜんキミなんて眼中になかったから。真面目だけが取り柄の、いかにも草ばっか食べてそうなつまらない女、ってね」

辛辣な物言いでも、決してもう驚かないし、傷ついたりもしなかった。

「なんなら福山さんのほうを憎からず思っていたくらい。なりふり構わずグイグイくるガツガツした感じがおもしろくてさ。へんな話、あけすけな感じもあそこまでいくと清々しいというか」

決して“言い寄られて困っている”なんてことはなく、冷ややかにおもしろがっていたなんて、やっぱり怖い人だと思う。

「でもさ、キミが急に変わりだしたから」

(え……?)

「そうだな、たぶん弁当なんか持ってき始めた頃だな。いきなり雰囲気が変わりはじめて驚いたんだ。みるみるうちにきれいになっちゃってさ。それがおもしろくて、興味が出てきたわけ」

唐木さんが言っていた“ホストの技法”という言葉が頭をよぎった。

(本当に、貴志先生って女性を鋭く見ているんだ)

貴志先生が変化を感じたというのは、ちょうど彼と暮らし始めて、お付き合いを始めて、そんな頃だもの。

まったくの無自覚だったわけじゃないけど、思いのほか私は変わっていたのかもしれない。

彼と暮らすことで、生活のすべてが上質で満ち足りたものに変化して。

何より精神的に安定して、想い想われる幸福感で満たされて。

まさに、家猫になったら毛並みがよくなって気性も穏やかになった、みたいな?

こんな言い方、自虐的だと麗華先生に叱られてしまいそうだけど、野良猫の私が素敵な飼い主様に拾われて、愛猫として大事にされているという現在。

その素敵な飼い主様というのが――。

「男だろうとは思ったけど、まさか保坂センセイとはね」

貴志先生は、呆れたような感心したような、なんとも言えない笑みを浮かべた。

「ボクと保坂センセイ、もうずいぶん勤務が同じになることがなかったからな。そういう日があれば、一発で気づいたんだろうけど。さすがにノーマークだよな、この展開は」

ずいぶんな自信家だなと思いつつ、その自信はあながち過信ではないだろうとも思った。

それにしても、貴志先生はいったいどういうつもりなのだろう?

どういうつもりで、こんな……。

「でもさ、ボクにしとけば?」

(……はい? いまなんて?)

思い切り耳を疑う私に、貴志先生はもう一度言った。

「悪いこと言わないから、ボクにしておきなよって話」