本当、何を考えているのかまったくわからない。
わからないからこそ、とても怖い。
「ボクはキミに興味があるんだよ」
笑っているようでいて、目は笑っていない。
まるで作り物のような笑顔に、いっそう警戒心が増す。
「ご冗談ばっかり。貴志先生が私に興味を持たれるわけないです」
「まあ、確かに。最初から興味があったわけじゃないな」
貴志先生は一瞬「ふーむ」と何やら思案する表情をしたけれど、再び一方的に話し始めた。
「本当、最初はぜんぜんキミなんて眼中になかったから。真面目だけが取り柄の、いかにも草ばっか食べてそうなつまらない女、ってね」
辛辣な物言いでも、決してもう驚かないし、傷ついたりもしなかった。
「なんなら福山さんのほうを憎からず思っていたくらい。なりふり構わずグイグイくるガツガツした感じがおもしろくてさ。へんな話、あけすけな感じもあそこまでいくと清々しいというか」
決して“言い寄られて困っている”なんてことはなく、冷ややかにおもしろがっていたなんて、やっぱり怖い人だと思う。
「でもさ、キミが急に変わりだしたから」
(え……?)
「そうだな、たぶん弁当なんか持ってき始めた頃だな。いきなり雰囲気が変わりはじめて驚いたんだ。みるみるうちにきれいになっちゃってさ。それがおもしろくて、興味が出てきたわけ」
唐木さんが言っていた“ホストの技法”という言葉が頭をよぎった。
(本当に、貴志先生って女性を鋭く見ているんだ)
貴志先生が変化を感じたというのは、ちょうど彼と暮らし始めて、お付き合いを始めて、そんな頃だもの。
まったくの無自覚だったわけじゃないけど、思いのほか私は変わっていたのかもしれない。
彼と暮らすことで、生活のすべてが上質で満ち足りたものに変化して。
何より精神的に安定して、想い想われる幸福感で満たされて。
まさに、家猫になったら毛並みがよくなって気性も穏やかになった、みたいな?
こんな言い方、自虐的だと麗華先生に叱られてしまいそうだけど、野良猫の私が素敵な飼い主様に拾われて、愛猫として大事にされているという現在。
その素敵な飼い主様というのが――。
「男だろうとは思ったけど、まさか保坂センセイとはね」
貴志先生は、呆れたような感心したような、なんとも言えない笑みを浮かべた。
「ボクと保坂センセイ、もうずいぶん勤務が同じになることがなかったからな。そういう日があれば、一発で気づいたんだろうけど。さすがにノーマークだよな、この展開は」
ずいぶんな自信家だなと思いつつ、その自信はあながち過信ではないだろうとも思った。
それにしても、貴志先生はいったいどういうつもりなのだろう?
どういうつもりで、こんな……。
「でもさ、ボクにしとけば?」
(……はい? いまなんて?)
思い切り耳を疑う私に、貴志先生はもう一度言った。
「悪いこと言わないから、ボクにしておきなよって話」
わからないからこそ、とても怖い。
「ボクはキミに興味があるんだよ」
笑っているようでいて、目は笑っていない。
まるで作り物のような笑顔に、いっそう警戒心が増す。
「ご冗談ばっかり。貴志先生が私に興味を持たれるわけないです」
「まあ、確かに。最初から興味があったわけじゃないな」
貴志先生は一瞬「ふーむ」と何やら思案する表情をしたけれど、再び一方的に話し始めた。
「本当、最初はぜんぜんキミなんて眼中になかったから。真面目だけが取り柄の、いかにも草ばっか食べてそうなつまらない女、ってね」
辛辣な物言いでも、決してもう驚かないし、傷ついたりもしなかった。
「なんなら福山さんのほうを憎からず思っていたくらい。なりふり構わずグイグイくるガツガツした感じがおもしろくてさ。へんな話、あけすけな感じもあそこまでいくと清々しいというか」
決して“言い寄られて困っている”なんてことはなく、冷ややかにおもしろがっていたなんて、やっぱり怖い人だと思う。
「でもさ、キミが急に変わりだしたから」
(え……?)
「そうだな、たぶん弁当なんか持ってき始めた頃だな。いきなり雰囲気が変わりはじめて驚いたんだ。みるみるうちにきれいになっちゃってさ。それがおもしろくて、興味が出てきたわけ」
唐木さんが言っていた“ホストの技法”という言葉が頭をよぎった。
(本当に、貴志先生って女性を鋭く見ているんだ)
貴志先生が変化を感じたというのは、ちょうど彼と暮らし始めて、お付き合いを始めて、そんな頃だもの。
まったくの無自覚だったわけじゃないけど、思いのほか私は変わっていたのかもしれない。
彼と暮らすことで、生活のすべてが上質で満ち足りたものに変化して。
何より精神的に安定して、想い想われる幸福感で満たされて。
まさに、家猫になったら毛並みがよくなって気性も穏やかになった、みたいな?
こんな言い方、自虐的だと麗華先生に叱られてしまいそうだけど、野良猫の私が素敵な飼い主様に拾われて、愛猫として大事にされているという現在。
その素敵な飼い主様というのが――。
「男だろうとは思ったけど、まさか保坂センセイとはね」
貴志先生は、呆れたような感心したような、なんとも言えない笑みを浮かべた。
「ボクと保坂センセイ、もうずいぶん勤務が同じになることがなかったからな。そういう日があれば、一発で気づいたんだろうけど。さすがにノーマークだよな、この展開は」
ずいぶんな自信家だなと思いつつ、その自信はあながち過信ではないだろうとも思った。
それにしても、貴志先生はいったいどういうつもりなのだろう?
どういうつもりで、こんな……。
「でもさ、ボクにしとけば?」
(……はい? いまなんて?)
思い切り耳を疑う私に、貴志先生はもう一度言った。
「悪いこと言わないから、ボクにしておきなよって話」



