言ってから「しまった!」と気づいても遅かった。
「私だって、というと?」
「それは、その……なんというか……」
まさかまさか、心の内をすべて言えるわけがない。
オトナの男の色気とやらに勝手にあてられて、ゾクゾクしてメロメロでしたとか?
なんだかみだらなへんな気持ちになっちゃいましたとか?
そんなこと、とてもとても……。
(でも、やっぱり……)
それでも、大切な気持ちはちゃんと伝えなきゃ。
私は彼と同じように足を伸ばして座りなおすと、少しもたれるようにしてぴたりと寄り添った。
「あの、本当にとっても素敵な演奏で、すごくドキドキして……。一瞬で心を奪われるって、こういう感覚なんだなって。私、この歳になって初めて知ったというか」
彼の顔は見ないまま、その肩に身を寄せながら話を続ける。
「正直、今までよくわからなかったんです。一目惚れなんてしたことないし。でも、まさに瞬殺で。一瞬で心をまるごと持っていかれて。あとはずっと釘付けで」
ひどく心を揺さぶられて、甘酸っぱくて、切なくて、きゅうっと胸が苦しい感じ。
そのうえさらに、ひどく甘美で、歯がゆくて……。
話していると、その感情がよみがえってくるようで、なんだか胸がいっぱいになる。
「好きになっちゃった?」
顔をのぞきこんで優しく微笑む彼に、私はこっくり頷いた。
半分冗談みたいな言い方をしていても、彼は決してからかったりはしていないってわかるから。
「なっちゃったも何も、ずっと好きなんですけど……なのに、もう一度好きになっちゃった、みたいな」
本当、同じ男性(ひと)にまた恋してしまうなんて。
そんな恋愛漫画みたいなこと、あるものなんだなって。
「まいったな」
「え?……て、ああっ……」
瞬間、彼はちょっと強引に私の体を引き寄せた。
抱き寄せるというのでなく、もっと強く、優しく乱暴に……。
(えっ、と……)
頭は彼の膝の上。
驚いたまま仰向けで彼を見上げる私を、彼が静かに見下ろしている。
「君のせいだよ」
彼はおもむろに眼鏡を外すと脇へ置いて、あらためて私をじっと見つめた。
眼鏡なしの顔にもずいぶん慣れたはず、だけど。
だからこそ、というか……。
だって、私の前で彼が眼鏡を外すのは“始める”手順のひとつみたいなものだから。
眼鏡越しではなく見つめられると、たまらない気持ちになってしまう。
なのに、そんな心を彼は容赦なく射抜いてくる。
「君が可愛すぎるから」
「そんなっ……あぁっ……っ」
わけがわからないまま、今度はいとも簡単に床の上に組み敷かれて――。
まるで「もうお手上げ」のようなかっこうで、両方の手首を押さえつけられ自由がきかない。
往生際悪く視線を泳がせてみたところで、逃れられるわけもなく。
高鳴る鼓動と、ざわめく心。
甘い期待を抱きながら、抗いたい自分も消し去れない。
そんな面倒くさい女を彼はとらえて離さないのだから。
(こんなのずるい……)
手首を押さえる力はごくごく弱くて緩いのに、絶対的に私をとらえて離さない。
「僕のほうこそ」
私をまっすぐ見下ろす彼の瞳が、微かな熱を帯びて切なく揺れる。
(本当にずるいのは、私のほう……)
絵的には彼が求めているようでいて、本当は?
「君のこと、もう何度好きになったかわからない」
手首に触れていた手が柔らかに手のひらを包み、彼の指と私の指が、溶け合うようにしっとり緩く絡み合う。
そうして、私たちは甘い熱でとろけるような情熱的なキスをした。
「私だって、というと?」
「それは、その……なんというか……」
まさかまさか、心の内をすべて言えるわけがない。
オトナの男の色気とやらに勝手にあてられて、ゾクゾクしてメロメロでしたとか?
なんだかみだらなへんな気持ちになっちゃいましたとか?
そんなこと、とてもとても……。
(でも、やっぱり……)
それでも、大切な気持ちはちゃんと伝えなきゃ。
私は彼と同じように足を伸ばして座りなおすと、少しもたれるようにしてぴたりと寄り添った。
「あの、本当にとっても素敵な演奏で、すごくドキドキして……。一瞬で心を奪われるって、こういう感覚なんだなって。私、この歳になって初めて知ったというか」
彼の顔は見ないまま、その肩に身を寄せながら話を続ける。
「正直、今までよくわからなかったんです。一目惚れなんてしたことないし。でも、まさに瞬殺で。一瞬で心をまるごと持っていかれて。あとはずっと釘付けで」
ひどく心を揺さぶられて、甘酸っぱくて、切なくて、きゅうっと胸が苦しい感じ。
そのうえさらに、ひどく甘美で、歯がゆくて……。
話していると、その感情がよみがえってくるようで、なんだか胸がいっぱいになる。
「好きになっちゃった?」
顔をのぞきこんで優しく微笑む彼に、私はこっくり頷いた。
半分冗談みたいな言い方をしていても、彼は決してからかったりはしていないってわかるから。
「なっちゃったも何も、ずっと好きなんですけど……なのに、もう一度好きになっちゃった、みたいな」
本当、同じ男性(ひと)にまた恋してしまうなんて。
そんな恋愛漫画みたいなこと、あるものなんだなって。
「まいったな」
「え?……て、ああっ……」
瞬間、彼はちょっと強引に私の体を引き寄せた。
抱き寄せるというのでなく、もっと強く、優しく乱暴に……。
(えっ、と……)
頭は彼の膝の上。
驚いたまま仰向けで彼を見上げる私を、彼が静かに見下ろしている。
「君のせいだよ」
彼はおもむろに眼鏡を外すと脇へ置いて、あらためて私をじっと見つめた。
眼鏡なしの顔にもずいぶん慣れたはず、だけど。
だからこそ、というか……。
だって、私の前で彼が眼鏡を外すのは“始める”手順のひとつみたいなものだから。
眼鏡越しではなく見つめられると、たまらない気持ちになってしまう。
なのに、そんな心を彼は容赦なく射抜いてくる。
「君が可愛すぎるから」
「そんなっ……あぁっ……っ」
わけがわからないまま、今度はいとも簡単に床の上に組み敷かれて――。
まるで「もうお手上げ」のようなかっこうで、両方の手首を押さえつけられ自由がきかない。
往生際悪く視線を泳がせてみたところで、逃れられるわけもなく。
高鳴る鼓動と、ざわめく心。
甘い期待を抱きながら、抗いたい自分も消し去れない。
そんな面倒くさい女を彼はとらえて離さないのだから。
(こんなのずるい……)
手首を押さえる力はごくごく弱くて緩いのに、絶対的に私をとらえて離さない。
「僕のほうこそ」
私をまっすぐ見下ろす彼の瞳が、微かな熱を帯びて切なく揺れる。
(本当にずるいのは、私のほう……)
絵的には彼が求めているようでいて、本当は?
「君のこと、もう何度好きになったかわからない」
手首に触れていた手が柔らかに手のひらを包み、彼の指と私の指が、溶け合うようにしっとり緩く絡み合う。
そうして、私たちは甘い熱でとろけるような情熱的なキスをした。



