「おい、起きろ祐大っ!!」






授業が終わってもなお前の席で気持ち良さそうに寝ている祐大の背中を、俺は遠慮なくパシパシ叩いた。






「んんっ……痛った…あ、おはよ」






ニヤニヤしながら、焦げ茶で短い髪の毛をクシャクシャっとして起きた祐大に、俺はさらに腹を立てた。






さっきの授業で大恥を書いたのも全部こいつのせいだっ!!!






「まったくよぉ、お前のせいで…」






「あ、気に入ったろ?罰ゲーム」






後ろ向きに座り直して椅子にまたがった祐大。






俺の言葉を遮ったこいつのニヤニヤは止まらない。







「誰が気に入るかってんだよ!」







俺は祐大を軽く殴ってやろうと拳を引いた。





それに対して大袈裟にバリアのポーズを取る祐大。






「ちょっと想太ぁ」






と、このタイミングで誰かが俺を呼ぶ声がして、その声の主は俺の拳を後ろから優しく止める。






「あ、澪菜(れいな)。なんだよ笑いに来たのか?」





俺がそう言うと彼女は俺の拳を学ランの上へと置いた。







そうして俺の机の横にしゃがみこむ彼女。





ボブ…というのだろうか。







茶髪のショートヘアの彼女はにっこりと笑って






「正解っ!」






と嬉しそうに言った。






「想太、超面白かったよ!授業中にいきなり大きい声出して立ち上がるなんて。ふふ。それにしてもなんであんなにびっくりしてたの?」






大きい瞳をさらに大きく見開き俺の顔をのぞき込んだ澪菜。





水出 澪菜(みずいで れいな)は幼稚園の頃からの幼馴染み。







体型はスラっとしていて、まるでテレビに出てくるモデルみたいだ。







「こいつが…」






そう言って祐大をチラッと見たが、






俺は言いかけてやめた。






祐大の書いた罰ゲームの紙を手に握る。






同じ女としてこんな事されたらどう思うのだろうか。






やっぱりよろしくないんじゃないのか…