「ん?どうかした?」
横にいる彼女の表情を伺おうと、首を傾ける。
すると美春は
「ううん。何でもないよ。ただ…ただちょっと羨ましいなぁって思ったの」
そう言って優しく微笑んで、少し先を歩く澪菜を見ていた。
俺も釣られて、澪菜のいる方に目をやる。
当の本人は、裕大を呼び楽しそうに話しながらじゃれ合っていた。
「まぁ、あいつとは家族ぐるみの付き合いだからな」
「あ、違うの。そういう事じゃなくて…」
「ねぇねぇー!これ乗ろうよー!!」
美春の言葉を遮る様に、澪菜のはしゃいだ声が響いてくる。
「わぁー!すごーい!楽しそう」
そう言って美春は俺の腕をすり抜けて、澪菜の方へと小走りで向かった。
美春は、何を言いかけたんだろう。
彼女の小さな背中を見ながらそう思っていた。