美しい春







何分経っただろうか。







きっと、ほんの30秒や、1分のこと。







でも俺には、物凄く長い時間のように思えた。







もう、顔を上げちゃおうか。









そんな事を思っていた時、







そっと俺の手を包み込む小さな手の感触。







それに驚いてすぐに顔を上げる。










「はいっ」











そこにあったのは彼女の、菊川 美春の美しい笑顔だった。








ただ、それがどうしてか俺には、








少し、









ほんの少しだけ、悲しげに写った。