「…悪い。立場上、どうしても話せなかった」

そう言って頭を下げる。

「…私もごめんなさい」
「琴乃?」

深々と頭を下げる琴乃を見て、少し動揺する。

「…大路さんに、社長を信じて欲しいとお願いされたのに、信じる事が出来なくて」

俺は琴乃の頭をそっと上げさせる。…また泣いてる。

「俺は怒ってない。不安にさせたのは俺だから。もう泣くな。俺は琴乃の笑顔が見たい。お前の笑顔を見るのが、こと上無く幸せなんだ」

俺の言葉に、琴乃は慌てて涙をゴシゴシと拭う。

「コラ、そんなに強く目をこするな。明日に響くぞ」

「だって」
「…ん?」

「秀吾さんが、笑顔が見たいって言うから」

そう言って何度も涙を拭う姿を見て、自然と笑みがこぼれた。