「…もうすぐでかたがつくんだ。それまでは、琴乃にであっても話せない」

俺の言葉に、大路は大きな溜息をついた。

「…本当に宜しいのですか?もし、他の男に、琴乃さんを持って行かれても?」

「…意味深な言い方だな。心当たりがあるのか?」

俺の問いに、大路は首を振った。

「知りません。ですが、社長と三浦さんの話を聞いた夜、琴乃さんは自宅には戻らなかった。マンションにもです。琴乃さんの友人は、既婚者ばかりで、泊まるのも無理そうです。それでは一体どこに泊まったんでしょうね?」

大路の言葉に、俺は黙り込んだ。

…あの晩、琴乃の所在は分からなかった。分かったのは、早朝の琴乃の父からの電話だった。

自宅に帰るまで、琴乃はどこにいたのか?


「…今夜もまた、私共の知らない家に泊まるやもしれませんよ?本当に、放っておいて宜しいのですか?」