「…琴乃を愛してる」
「…うそ、…うそよ」

泣きながら呟くように言う。だが、秀吾は首を横に振った。

「うそじゃない。俺には、琴乃だけだ」
「三浦さんがいるくせに」

「…玲子と会ったのか?」

『玲子』呼び捨てなんだ。そう思っただけで、胸が苦しくなる。

「三浦さんのところに行ってください。欲しいものがあるなら、全て差し上げます。だからもう、私の事は、解放してください」

「…本気で言ってるのか?」

泣きながら、小さく頷くと、秘書室を飛び出した。

タイミング良くエレベーターが開き、飛び乗った。

「…琴乃さん?」
「…大路さん、…すみません、用ができたので帰ります」

「…泣いてるんですか?」
「…」

私は俯きつつ、頭を下げると、エレベーターを閉めた。

その時、向こうから、走ってくる秀吾が見えたが、無視をした。