私なんて、女とすら認識されていないのか?

そう思うと、悲しくて辛い。

秀吾は、私の気持ちなんて知らない。でも、私は勿論自分の気持ちは知ってる。

だから、抱かれたかった。秀吾が私を嫌いでも良かった。私は秀吾が好きだ。それだけで良かった。

身体だけの関係になってしまっても、秀吾を感じる事が出来れば、傍に居られれば、それだけで幸せなのに。

…でも、自分の気持ちは告げられない。

告げてしまえば、秀吾は私から離れていってしまうかもしれないから。


「…琴乃」

甘く低い声が聞こえてきた。

この声が好き。低くて優しいこの声が。

私はそっと顔を上げると、寝起きの秀吾の顔を見つめた。

…寝起きの顔だと言うのに、整ってるって凄いななんて、思ってしまう。