私は三条社長の秘書をしていた。

社長室に隣接された秘書室で、業務をこなしていると、用件を終えた秀吾が出てきた。

私はサッと立ち上がると、秀吾に頭を下げる。

…いつもなら、私を見る事もなく、さっさと横を通り過ぎて帰って行くのに、視線を感じた私は頭を上げると、思わず目を見開いた。

「…あの、何か?」

なんとかそう言葉を発した。

無理もない。表情一つ変えないで、私を見つめているのだから、困惑する。

困惑する私を数秒見つめていた秀吾だったが、何を言うでもなくそのまま行ってしまった。

パタンとドアが閉まると、力が抜けたように私は椅子に座り込んだ。

「お、驚いた…なんだったの?」

そう言うと、溜息をついてうな垂れた。

…顔が熱い。